さてとここでスタジオとマッスル・ゴールデン・カルテット=四人衆の写真を。買いそびれていたCD『Lynyrd Skynyrd: Complete Muscle Shoals Album』(98) のブックレットから。MCAからのデビュー前にスキナードが行っていたデモ録音はマッスル/ジミー・ジョンソン・プロデュースであった、その時の音源集。
 インレイに映るは雨あがりか、虹が架かるマッスル・スタジオの全景、なかなか良い写真ですな。が、ここは "3614 Jackson Highway" の文字看板が掛かる最初の、住所でいうと Muscle Shoals, Alabama のスタジオ。ブックレットによるとスキナードのセッションは71〜2年に行われたとあるが場所が "Muscle Shoals Sound Studios, Sheffield, Alabama となっている。う〜む、シェフィールド移転は78年であるとジミー・ジョンソンのサイトにあったことは前に書いたが、どうもアルバム毎にこの表記はまちまちで移転の時期はあやふやなままだ。まあ、スキナードのセッションは間違いなく最初のスタジオ当時だろうが。

 

そしてスタジオ前に並ぶ "四人衆/Muscle Swampers" だが、左からバリー・ベケット、ロジャー・ホーキンス、デヴィッド・フッド、ジミー・ジョンソン。これが意外も意外、オレの想像では体型的にいって左からデヴィッド/ジミー/バリー/ロジャーの順だった。リズム隊二人はビールを浴びるように呑むタイプ、デヴィッドはビール腹にベースをのっけて弾いているってのがイメージだった。プロデュース組のバリーとジミーが細身かと思ったらまるで逆でありました…。

L to R: Barry Beckett, Roger Hawkins, David Hood, Jimmy Johnson

 

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 「ギターマガジン」誌上で山下達郎がマッスルのことを話していると聞いて読んでみたが案の定ピートについての言及無し。
「マッスル」と言う場合、結構難しい。その意味に三通りある。
1)アラバマ州マッスル・ショールズという地名のこと
2)アトランティック・レーベル/フェイム・スタジオ/ジェリー・ウェクスラーをまとめて指す(60年代)
3) Muscle Shoals Sound Studios のこと(70年代〜)
 ヤマタっちゃんは(2)でオレは完璧に(3)だな。しかしこの頁の冒頭に記したようにフェイムがフローレンス・アラバマ・ミュージック・エンタプライズの略ならばフェイムスタジオの場所はマッスルではなくフローレンスでは。
 つまり日本で“マッスル”と言う場合、フローレンス/シェフィールド/マッスル・ショールズの三箇所はいっしょ、要はこの界隈がマッスルであり、ウェクスラーの仕事場としてのマッスルなんだろう。
 オレはフェイムを全然知らないからひたすらピートを中心にマッスルスタジオ、それにマッスル四人衆を追究しているわけ、70年以降をね。
 タっちゃんの話の中でわからんかったのが“マッスルショールズのメンフィス・サウンド”、なんのこっちゃ? レジー・ヤングをマッスルのギタリストとしているのもいかがなものか。レジーはやっぱり Chips Morman のアメリカン・スタジオおかかえギターマン、Memphis Cats の一人じゃないのかなぁ。確かにナッシュヴィル、アラバマ(マッスル)への出張りが滅茶苦茶多い人ではあるが…。それとも60年代には FAME の座付きギター弾きだったのだろうか。少なくとも70年代以降はマッスルのギター弾きにその名は無い。

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 NANCYというヴィンテージギター屋のオヤジさん(Kunio Kishida)がひょんな事から日本人初(たぶん)のマッスル録音を敢行してしまった。『南水/Swamp Waters』なるCDとして。しかしギターには相当詳しそうだがマッスルのなんたるかを知るわけではなさそう…オレとしてはあまり聴く気がしない。セッションにジミー・ジョンソンのみ参加、ベケット/フッド/ホーキンス、もちろんピートの名もないとなればなおさら。
 使用ギターにディッキー・ベッツが所有していた59年レスポールもあるという。 "Jessica" "Ramblin' Man" はフェイヴァリットなオレだが同じギターとはいえ、あれほどのサウンドを披露できればギター屋のオヤジに収まっちゃいないだろう。ヴィンテージギターの「音」が聴きたいわけじゃない、「フレーズ」「楽曲」が聴きたいのだ。

 聴きもせずにうたうだ悪口書いてしまったが、オヤっさん、CD制作レポートを「ギターレジェンド」というムックに寄せている。それは今日のマッスルを知るよい資料だ。
 数点の写真に今現在のマッスルショールズスタジオが写っている。詳しい住所のないのが残念だが、川辺りのこの場所が移転先、シェフィールドということなのだろう。入口ドアには "Muscle Shoals Sound Studios" の文字と、その下にM,S,Sのアルファベットを組み合わせたロゴマークが描かれている。そうなのだ、このロゴを使ったレコードレーベル、その名も Muscle Shoals Records が実は存在する。中古盤捜しをしていてブラックコーナーで今までに3〜4枚、そこからのLPを目にした。どうも80年代から運営を始めたようす。セッションクレジットには四人衆の名はあるがピートはないので今のところ手つかずなのだが…。
 マッスルでも「ナッシュヴィル・ナンバー」が使われているとKishida は言う。やはり。マッスル録音にはナッシュヴィル勢の参加も少なくない、それに元々マッスルの始まりはナッシュヴィルから地元へ戻ったリック・ホールからだったはず、ならば当然とも言えるが。
 チャーリー・マッコイが考え出したというナッシュヴィル・ナンバー、コード(および小節)を数字に置き換える方法で、セッションの際に譜面を使わずにその数字を書いた紙のみをメンバー全員に渡すらしい。転調してもコード譜ならば書き直さねばならないが、これだとその必要なしだとか。

 このレポートで一番驚いたのが、スタジオのマネージャ曰く「オーナーが近々スタジオを売りに出すかもしれない」と。ん?オーナーとは四人衆では? だが、文中の書き方ではそうではないらしい。そうならばセッション参加のジミーの口からとなるはずだ。想像するに四人衆は80年代(レーベル開始頃)にスタジオの所有権は売ってしまったのではないか。オーナーは既に何人目かになっているとも思える。オレなんかからすると思い入れいっぱいのスタジオを簡単に手放すのは、なんて思うがそこはアメリカ人、あくまでもビジネスの一環なんだろうなぁ。(021206)

 

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 実はすっかり勘違いをしてました。ポール・サイモンの初マッスル録音はソロ2作目*『Paul Simon』、「母と子の絆」のレゲェはマッスルリズム隊によるものとばかり思いこんでいた。この頁でも再三レゲェっぽい曲を“ポール・サイモンを彷彿させる”と書いてしまったな。有名白人ポップシンガーによるマッスル詣での先駆けはポールであると思っていたわけ。*(65年の英録音を1枚目とする)
 容易に入手できるだろうと踏んでいたら思いの外見つからず時間がかかったポールの2枚をやっと…。

#041
"Paul Simon / There Goes Rhymin' Simon"
[ '73 CBS/Japan Quadrophonic-disc]
<B:★★★★>

 大ヒットアルバム、もちろんリアルタイムに知る盤だが手にするのは初めて。音よりも先に感服したのがジャケット・デザイン。細部まで見たことなかったから新鮮、見開き両面(30×60cm)で1作品。作はアメリカ・グラフィックデザイン界の巨匠ミルトン・グレイサー。さすがの出来映えにただただ敬服、これはCDサイズでは全く意味を成さない。

 ポール先生、ステイプルズ "I'll take you there" を聴いてマッスル行きを決意したとか。始めの予定は「夢のマルディ・グラ」1曲の録りのみだったという。ところが3日間ブッキングしていたスタジオで……“1日で終えてしまった。いつも長い時間かかっていたからそれはショックだった”とコメント。結局その3日で5曲を録れたそうな。
 マッスルリズム隊がいかに優秀かを表すエピソードですなあ。強固なチームワーク、個々のヘッドアレンジ能力の高さ無くしてはできないこと…流石。あまたのアーティストのマッスル詣でも納得できようというもの。

 さてその内容だが、マッスル6曲、マラコ1曲、NY2曲、ロンドン1曲で計10曲。マラコ(Malaco)レコード、所在地はミシシッピ州だがやはりマッスル同様ディープ・サウスで、ブラックミュージックの代表的レーベル。いやあ、ここで録った曲も素晴らしい音。となるとこのアルバム、全曲を南部録音でまとめたほうが良かったのでは。次作がいかにものNY的アルバムなのでNY2曲はそちらへ入れるべきだったように思う。ロンドン録音曲は Del Newman のストリングスがもろ英国、このアルバムの中では浮いている。
 アルバムトップはヒット曲「僕のコダクローム」。ラジオで散々聴いた曲だが改めてじっくり聴いてみた。この曲、グレイト! マッスルを代表する1曲と言える。軽快だが浮わつかないリズム隊、伸びやかなピアノ、そして驚いたのがエレキギター。クレジットではアコギにポールとピート・カーで、エレキはジミー・ジョンソンのみ。今までジミーのギタープレイに言及したことがなかった。本当に目立たない、サイド・カッティング・オンリーの人なので。この曲でも始めはどこにエレキが入っているやらと大した関心もなかったが…。よく聴けば、なかなか分かりづらい音だったがそのブッ太く低いギター音はこの曲に素晴らしいニュアンスを与えていた。特にフェイドアウト前30秒のプレイに脱帽。
 さて我が関心事、ピートのプレイの方。「コダクローム」、右チャンのアコギ、ジミーのエレキに負けないいい仕事。「マルディ・グラ」での“きざみ”ギターもいい、が白眉は "St. Judy's Comet" でのリード。

 全体にマッスル録音の映える好アルバムという印象、それもやはりポール楽曲のクオリティの高さあってしてだが。前記のようにマッスルとマラコのみの録音で一枚にしてほしかったね。
 (蛇足だが、マッスル曲の1曲 "Was A Sunny Day" はマッスル四人衆もピートも不参加曲。ここでポールと共にヴォーカルをとるのが Maggie & Terre Roche という姉妹、後に Roches となる二人らしいがこのデュオ名義でもアルバムを出していて、それもマッスル録音らしい。入手したいブツ)

 

#042
"Paul Simon/Still Crazy After All These Years"
[ '75 CBS/US]
<C:★★★★>

 前作から1年開けて75年のソロ4作目、これもマッスル物というので買ってみればマッスルはわずか2曲のみ。それもA-1 のタイトルトラックはベケット、フッド、ホーキンス参加だが、マイケル・ブレッカーのサックス、アレンジがボブ・ジェイムズ…これはNY録音に3人が出張り参加と見た。純粋なマッスル録音はA-2、サイモン&ガーファンクル復活と話題になった "My Little Town" のみだろう。(エンジニアが Jerry Masters、まず間違いない) この曲にElec. Guitar : Pete Carr とクレジットあるがほとんど聴こえず。
 つまりマッスル物という見地からはプアなアルバム。しかしNYという見地からすると興味深く内容も良い。いや、実はある驚きがあった。このアルバムと双子というべきアルバムがあった事実、その盤のほうを長年愛聴してきたのだ。なのでマッスル話からはそれるがこのことを書いておこう。

 とにかくその音像の酷似、孤独な New Yorker が静まりかえった深夜の部屋にひとり、そんなイメージの2枚で鎮静効果も同様だな。ずばり“New York by night”、そのアルバムとはフィービ・スノウのセカンド『Second Childhood』。このフィービのアルバム、酒を片手に深夜の愛聴盤としてきた。たぶんフィービよりもポールのアルバムを持つ者のほうが多いだろう、是非フィービLPを入手し、深夜に2枚を続けて聴いてみてほしい。驚くほど共通点を発見できるだろう。
  共にCBS、フィル・ラモン・プロデュース、ほぼ同様のバックメン…のみならずジャケ・デザインまでもが酷似なのだ。ポールのアルバムにフィービが参加している事実からしても関係ありあり。 Jessi Dixon Singers というゴスペル・クワイア、スタジオ仕事場が常のセッションメンと一線を画する人達が両アルバムに参加しているのを見ても、ポールのセッション終了のそれこそ翌日からフィービの録音が始まったのではと思わせる。まさしく双子=Twin Album といえる2枚。夜中のNYの音像を端的に表したアルバムの、Male/Female voice 盤といったところか。
(021211)

 

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このサイトページの為に非常に役立っているのがご存知 All Music Guide サイト。今や音楽業界のデフォルトとも言えるこのサイトならばもちろん“ピート・カー”項目もあり、そこでピート参加アルバムを一覧可能。知りもしなかったアーティストもかなり知ることとなった。今までに我がページで40数枚紹介してきたが、AMGリストからはまだめぼしいところだけで4〜50枚は手つかずということになってしまう。便利な反面罪作りでもあることヨ…。たいして覗く者もいないってのに変な義務感が生じて、中古盤漁りをしていてもついマッスル物を捜してしまう自分がいて、若干イヤになってきてるのも事実。ぼちぼちのつもりで始めたんだがそのさじ加減はなかなかに難しい。
 さて、この1枚もAMGを覗くまでは全く知らなかった盤、アーティスト。なれどこれがマッスル録音でありピート参加なのだという。池袋のレコ・フェアで見つけたが、さすがにシールドで¥500とは、まずどう考えても買う者がいるとは想像できない代物ゆえ当然のプライス。

#043
"Richard Tate"
[ '77 ABC/US]
<C:★>

 まったくもってどうにもわからぬアルバム。リチャード、歳の頃なら26、7か、ロンブーを幅広スラックスで隠し、革のロングコート姿でカメラの前に立つというジャケット(本人はキメているつもりらしい…)。ファンクのスパイスをちょいとまぶした典型的ヒット狙いの16(ビート)で歌う白人ポップシンガー…要するにボズ・スキャッグズのフォロワー。そう!全く意味のないマッスル録音もずばりボズの追随なんだろな。
 録音は Muscle Shoals/Record Plant, LA とある。普通ならばこんな場合ロス組にも知った名前(たとえばケルトナー、ジェイ・ワインディング、ゲイリー・マラバーあたり)があるもんだが見事に無し。おっと、唯一はストリングス・アレンジに Christopher Bond(ホール&オーツ、マリア・マルダー等をプロデュース)か。
 その音だが全編前記通りのファンキーポップス。マッスルらしさなどかけらも無し。マッスル組は四人衆&ピートと、ベストメンバーのクレジットがあるというのに。何度か聴いてどの曲がマッスル録りかと捜したがこりゃそういう作りではないな。しょうもない曲でも「ん、このスネアはホーキンス」「このエレキ・シタールはピート?」とか思える箇所があるところをみると、前10曲中4〜5曲のベーシックトラックをマッスルで録り、それにEギター、コーラス、ストリング、ホーン等かなりの部分をロスで重ねたとオレは見たね。全曲アレンジがリチャード本人となっているしギターのクレジットにも名があるから本人が好き勝手にオーバーダブし、せっかくのマッスルトラックを台無しにしたとも想像できそう。いやはやトホホな「マッスル物」アルバム…。



#044
"Johnnie Taylor / Taylored in Silk"
[ '73 Stax/JP]
<…:★★★>

 クレジット買い、録音場所が Muscle Shoals, Alabama/United Sound Studios, Detroit とあった盤。前盤と違ってこちらはベテラン黒人シンガーらしい落ち着いた仕上がり、サザンマナーの好盤としておこうか。
 名前は知っていたが聴くのは初めて。ブラックフリークには叱られるかもしれないが、この人の声(歌唱法)には大した特徴があるとは思えない、良くも悪くもR&Bシンガーの基本型てな感じ。グレイトなバックトラックにまあまあのヴォーカルが乗る盤…個人的見解はこんなところ。

全8曲中A-1, 4/B-1, 3 と4曲がマッスル録りだろう。アルバム裏のクレジットには録音場所はあるが参加ミュージシャン名が一切無し。マッスル曲でのギターにピートらしい音は感じられない、オブリと軽いリードを弾くのはエディ・ヒントンと思う。ピート不参加でもそのトラックはマッスルらしさがよく出たサウンド作りでかなりイケる。オレの場合、マッスル曲かどうかの判断はロジャー・ホーキンスのスネア/タム音であるかどうかがまず第一。柔らかいその音が大好きなのさ。このアルバムではロジャー含めマッスルらしさと云えば "Careless with our love"、これがベストテイク。

 "Startin' all over again" 、ご存知メル&ティムのヒットナンバー、我がサイトでもマッスル録音として採り上げている。この曲をカヴァーしているがここではマッスルの音ではない、デトロイト録りだろう。このサザンフィーリング溢れる名曲をなぜにマッスルで録らなかったかと一瞬思ったが、同じバックメンではオリジナルヴァージョンと大差なくなると判断したんだろうな(発表時期も近い)。デトロイト曲はスタックスというレーベルの盤にしてはモダン(やはり都会だから?)な音だがそれはそれで悪くない。

 

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こいつぁ〜ビックリ、あの大ヒット曲のギターがピート・カーであったとは。マッスルは一切関係なしのこのアルバム…。

#045
"Barbra Streisand / Guilty"
[ '80 CBS/JP]
<C:★★>

 どうかねぇ、アメリカの美空ひばり? バーブラ(蛇足:今気付いたがバーバラじゃないんだね)姐さん。日本じゃさっぱりですが本国では60年代始めからレコードだけとっても売れに売れてますわなぁ。そんな姐さんが、ディスコ・エラを征したともいえるBee Gees のアタマ、バリー・ギブと組んだのがこのアルバム。全作曲、プロデュース、デュエットまでをバリーが担当。これで売れなきゃウソ…なワケで、当然アルバムは1位3週のプラチナ、シングルも3曲がトップ10に。

 アラバマからは最も遠いところに位置しそうなアルバムだが、思い出してほしいのはS&Gとピートの関係。そうです、ピートは結構NYがハマるギタリスト。全9曲中3曲にピートのクレジットあり。
 Produced by Barry GIbb, Albhy Galuten & Karl Richardson、録音はクライテリア(マイアミ)、ハリウッド、NY。ピートのブッキングの鍵、オレはプロデューサーの一人、アルビー・ギャルッテンと見た。この人、ほぼクライテリア・スタジオの住人、フロリダ・ベースのキーボーディスト/プロデューサー。フロリダ州といえばピートの故郷は Daytona, Florida であったはず。同州人としてこの二人に関係があると、勝手な思い込み(?)。

 シングルカット"Woman in Love" が全米1位。クレジット上この曲のEギターはピートのみ。散々耳にしたイントロのギター(Double-Track)がピートであったという次第。となると一般的に一番聴かれているピートのプレイはこれか? お薦めのギターじゃないんだが…。シングル第三弾 "What Kind of Fool"(10位)、これもエレキ&アコギにピート。これは微かにオブリが聴こえる程度、あかん。もう1曲はラストソングで、ここでは Guitar solo by Pete Carr のクレジットが。「好きに弾いていいヨ」と云われたかのようなプレイ、そうさな、大村憲司のソロのようといえば通りがいいかも。オレは好きじゃない。

 アルバム全体を通せばやはりバリー・ギブのカラー強し、当たり前。一応メロディアスなバリー節に、歌い上げ大得意のバーブラ姐さんのヴォーカルが…いわばそれだけ。よっぽどのビージーズファン/バーブラファン以外にはちと辛いだろう。ただ "Never Give Up" という曲がスティーリーダン曲のようで面白かった。


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あのマッスルな名曲、みたび!

#046
"Kim Carnes / Sailin' "
[ '76 A&M/US]
Produced by Jerry Wexler and Barry Beckett
<A:★★★>

 バーブラに続いて女性シンガーだがこちらは自作派=SSW、そしてドンピシャにマッスルであるところも大きく異なる。ジェリー&バリーのプロデュース、全曲マッスル録音、四人衆&ピートと鉄壁の布陣で臨む76年物ならば「悪いハズがない」。
 
 ジャッキー・デ・シャノン曲 "Bette Davis Eyes" の全米1位が81年、ここでやっと日の目を見た彼女だがこのアルバムは不遇時代(?)のセカンド。全10曲中8曲が自作(もしくは旦那との共作)、それに Van Morrison 曲とマッスルならではのカヴァーを含む。なかなかメロディアスな佳曲を書ける人であり、それらに絡むピートのギターもよく聴こえる/弾いているという好盤(ここまで聴ける盤は珍しい)なのは確かだが…いかにもSSW然というか、カントリーロックなのでこれならマッスルでなくとも、ロスあたりでもよかったのではとも思える出来。ピート的には不満はないのだが(そのプレイ、とりわけ甘いバラッドでのリード/お馴染みの左右ダブルトラック録りのリフなど聴きごたえ十分)、フッド&ホーキンスのリズム隊が生きていない。骨太なサザン・グルーヴはほぼ皆無。
 含みを持たせた「マッスルならではのカヴァー」とは "It's not the spotlight" 。“マッスルといえばこの曲でしょ”とまで書いた名曲だがマッスル録りによるこの曲がまだあったとは。作者二人、ジェリー・ゴフィン、バリー・ゴールドバーグ盤に続く三度目の録音だろう。全体の出来はゴフィン・ヴァージョンに劣るがここでもことピートに関しては非常に良いのだ。なぜにこれをロッドの『Atlantic Crossing』でやってくれなかったのか、まことに残念至極。
(021215)



 

 

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