#126
"Fred Styles/Bandcestors"
[ '05 fat free films/US ]
<…:★★>

 「レココレ」の新譜紹介にこの盤を見つけ、「ウッソ〜!」と驚喜したのは幻のバンドの音源発掘と思ったから。なにしろピートの初参加バンド、はるか昔は60年代半ばのバンドだ、まさか音が残っているとは…。

戻って<12ぺージ>の最後を見て欲しい。

アラバマのローカルバンドでメンイッツ、さてこのバンドは存在したのか、はたまた 5 Minutes なのか…と書いた。実は "Five Men-Its" というバンドが存在したのだった。
なんとしても入手せねばと手を尽くし米国からのCD通販でどうにか入手した次第。

ただしウェブで探索時から若干の“手触りの悪さ”を感じていた。レコ番無し/タイトルが分からない。アーティストが「ファイブメンイッツ」ではなし、ならば bandcestors というバンドか? fred styles ?フレッドの「流儀」か?

CD到着、不安視していたCD−Rでなかったのはよかった。ブックレットもそれなりにまとまっている。
ここでようやく見えてきました。まず「スタイル」とあったのは人名でした。"bandcesters" というバンドなのかと思えば…これは今だ意味不明なのだが、とにかく、このCDはフレッド・スタイルズなるおっさん、元バンドマンが自身の手持ち過去音源をCD化したということ。つまりはスタイルズという人の30年に渡るバンド履歴をコンピしたわけだ。
そしてその振り出しが "Five menits" 、このバンドのベーシストであったということ。

まず、残念ながらこのCDではピートはまったく参加していない。ならば5メンイッツのメンバーであるという話は間違いであったのか。オレは否と思う。このCDはあくまでフレッド・スタイルズが中心だから。メンイッツの最後期にピートは絡んでいたと思うよ。CDバックの写真に写る5メンイッツの5人、左端のギタリストがどうもピートに見える。

それと、まさかのCD化と思ったけれどこの盤収録曲うち7曲(5メンイッツ含む)、エディ・ヒントンがボーカルをとる曲は既に彼のロスト・アーカイブCDとして発表されていたんだってさ。知らぬはオレばかり…。


*Tuscaloosa All-Stars ( '75- '76 )
 /demo: 7曲
*5 Menits
 / '65 original single : 1曲
 /studio sessions ( '66) : 6曲
*Bozo Band( '88)
 /live medley : 1曲


ここの収録は以上3バンド。まとめておけばいいものを曲順が飛んでいるのもなんだかなあ。
注目のメンイッツだが、65年にシングルをリリースしていたとは驚いた。R and H というド・マイナーレーベルからだが、しっかりリック・ホールのプロデュース、フェイムスタジオ録りで。この時点ではヒントンはいない。5人組、スタイルズ/ポール・ホーンズビー/ジョニー・サンドリンは参加。

このシングル、まあマスターなどないからだろうが、もろ盤おこしでノイズだらけ。残り6曲のデモ(翌66年)はモノラルだがきっちりリマスターできていてそれなりの音。デモではヒントンが参加している。

75、6年のタスカルーザ・オールスターズとなれば音ももちろんしっかりしていて、これはそこそこ聴ける曲も含まれる。いや、CDのトップを飾るのがこのバンド曲で "Nice Girl" というナンバー…これが最高の出来。というよりもこのCDはほぼ「これだけ」なのだが…。(この名曲も既出であったとのこと)


"Nice Girl" でリードギターはヒントンではなく Tippy Armstrong だろう。このタスカルーザというバンドはマッスル界隈のセッションバンド、お楽しみバンドといったところかな、普段は地元のバーで演奏していたのでは。ティッピー/スタイルズ/ヒントンら7人所帯。
ティッピーはマッスル録音盤のいくつかでその名が見えた。マッスル・ギタリストの一人。ボビー・ウマック盤によく参加していた記憶。この曲でのギターは凄くいいよ。ミキシングが悪く、音が小さいのが残念。ピアノをもっと下げてギターを上げるべきだった。

フレッド・スタイルズ氏の仕切り盤なのだが、どうにもこの人は冴えない。リードボーカルをとる曲もあるが歌に関しては圧倒的にヒントンの勝ち。まあ"Nice Girl" のソングライターとしてだけ認めておこうか。

そのヒントンだが、"Nice Girl" での熱唱にはグっと来ましたよ。しかし続けて聴くうちに、たしかに黒くってシンガーとしても非凡な才能と思う。が、キーが上がったオーティス…歌いまわしは似すぎてない?
どうもオーティス・レディング・フォロワーとだんだん思えてしまったのだが…。

60年代半ばのアラバマ・ローカルミュージシャンの音が聴けたのは貴重な体験…ではありますが、正直そう何度も聴きたい代モンでもない。聴きものはやはりその1曲のみ。

66年にビートルズカバーを2曲演っている。1ページ目、68年のアワグラスの2枚目レビューで、「ノルウェーの森」を“やらされている”と記したが違うな。13ページでのピートのソロCD。やはりビートルズをカバーしてその上トリビュート曲まで。
やっぱり偉大だねぇ、B4。アラバマの田舎まで十分浸透していたんだなあ。みんなB4が大好きだったんだなあ



#127
"Bob Crewe/Motivation"
[ '77 Elektra/US ]
produced by Jerry Wexler and Barry Beckett
<A:★★★★>

これがマッスル録音であることはAMGのピート頁で知ったが簡単に見つかる盤ではない/レアな一枚と思っていた。2年前に初めて見たときはヨケタプライスであったがかなり迷った。ここでパスすれば次はないのでは、と。しかし値段はさておき、内容に「うま味」があるとも思えなくてパスした。

ボブ・クリューが嫌いなわけではない、むしろ好きな部類だ。なにしろフォーシーズンズの後ろ盾として60年代アメリカンポップスに燦然と輝く功績を残した彼なのだから。"Rag Doll" は60年代最高曲のひとつ!
とはいえ、クリューのテイストとマッスルって…どうなの?という疑問、懸念。

まず出ないと思っていたらそんな事なくて。その後も2度遭遇…そのたびにプライスは下がって来た。そして3度のパス後、ついにミケタにまで下がって我が手に。

***

その内容ですが、懸念の半分は当たりで半分はハズレ。


プロデュースがウェクス/ベケット。バックトラックは完全マッスル録音で、四人衆/メルトン&マスターズのエンジニアと完璧メンツ。ギターはジョンソン以外にピートと Trevor Veitch という名前。ただしリードはピートの表記。全曲リードをとるのはピートのみとなっている。
それでも、ここがやっぱりクリューだよなあ…弦/ラッパ/コーラスはロスの Cherokee で。ボーカル録りはNYの Media Sound なのです。


弦のコンサートマスターにシド・シャープがあたり、キム・カーンズ/ウォーターズ/カート・ベッチャーらのコーラスとなれば典型的なロスサウンドですわいな。


つまり、マッスルのバックトラックの上にNYのボーカルとロスの味付け音が重なっているのです。2曲で"Voices of Inspiration" クワイアー(総勢30名?)が被ったりも…。


アラバマらしさ、骨太田舎サウンドとクリューの持ち味=本来の都会サウンドははたして融合できたか? う〜ん、どうだろうなあ…。ウェクスの狙いはそこだったろうが、出来てるような出来てないような。なんとも悩む、この盤。


悪い盤じゃない。さすがに百戦錬磨のクリューらしいいいメロの曲が並ぶ。しかしやっぱりこのメロはNYだよ、非常にソフィスティケイト。マッスル勢はNYへも出張ってポール・サイモンやアーティのバックもやったりしていたから都会の音もオーケーなんだけどね。
とくにピートはクライテリアでバーブラ・ストライザンドのバックをしたりロスでロッド・スチュワートのバックをこなしたり…、そのギターサウンドが結構この手、都会的ソフィスティケイトサウンドにハマるのです。で、ここでも(音自体は薄いが)かなりいい味、ピート的にも思わぬ拾い物となった。


とにかくいいメロが書ける人なのは確か。バカラックにも匹敵する才能。うん、その意味でやっぱりかなりイイ盤かな。歌も(自身が歌う盤が46才にしてこれが初という)かなり上手く、声もいい。

ん?ちょっと待てヨ。“燦然と輝く”とかいいながら実はよく分かってないんだよなあ。ボブ・クリューって作曲できるの?もしかして作詞家?
いやこのレコでは1曲除き全て共作でね、うち3曲は Mark James との。マークといえばエルビスにかなり書いていたカントリー系のメロディメイカー( "Suspicious Mind" fame)。それとやはりメロディメイカーで成らした Kenny Nolan との共作曲もある。となるとクリューの仕事はどの部分か?と…。



#......
"Chelsea Chartbusters"
[ '01 Sanctuary CD/UK ]
*Bobby Sheen / Love Stealing
*Stuff 'N' Ramjett / It's been a long long time

これは一応の参考盤としておくが、ちょっと驚いたね。
このCDは出て直ぐに買った盤で、結構愛聴していた。しかしライナーの文字が小さすぎてざっと目を通したはずだがたいした記憶もなかった。ところが今これを読み返すと、なんと Muscle Shoals の文字が見えるじゃないスか。

まずこの20曲収録コンピについて説明しておくと、これはウェス・ファレルというティンパン系音楽業界人("Hang On Sloopy" の作者でもある)が72年に興したレーベルのチェルシー(とそのサブレーベル・ロクスバリー)でのヒットシングルを集めたもの。
もっとも知られるヒットはウィリアム・ディボーン「ビーサンクフル」、続くのはニューヨークシティ「I'm doin' fine now」か。
80年の声を聞く前にポシャった様子、ようは70年代のマイナーレーベルのひとつなのだが、白黒/英米がごちゃ混ぜ=かなりなんでもアリなレーベルでした。

さてここに収録うち、まずはボビー・シーンによるシングル "Love Stealing" をチェック。
この人の名を聞いてすぐに誰と分かれば…え〜相当なスペクターフリークですかねぇ。
もとは何だろう?子供歌? フィレスからの大ヒットは62年 "Zip-A-Dee, Doo-Dah" 。歌うは Bob B. Soxx & The Blue Jeans 。
このボブ・ソックスこそがボビー・シーンなのだそうです。スペクター帝国の瓦解(?)後、流れ流れて75年にチェルシーから出したシングルというのがこの曲。
でもってこのナンバーが "the production company, Wishbone, the hot studio in Muscle Shoals" による制作とライナーノーツに書かれていたのだった。



以前にマッスル界隈にはマッスルショールズスタジオ/フェイム/クィンビー(後のブロードウェイ)以外にも数多くのスタジオが存在すると記したことを覚えておいでの客人はおられるかな?
中のひとつが Wishbone Studio 。
ピートのファーストソロ(No. 34)がやはりこのスタジオでの録音盤。そして No.83 のルーベン・ハウエル盤が、録音はブロードウェイだがプロデュース表記が:

produced by Clayton Ivey and Terry Woodford for Wishbone, Inc., Muscle Shoals, Alabama

となっている。ここでだいぶ見えてきた。ビリー・シーンのシングルは Frank Johnson/Terry Woodford のペンであり、Arranged by C. Ivey & T. Woodford (produced by Ed Sharman?) とある。つまり完全にマッスル楽曲、マッスル録音。
思うにウィッシュボーン・スタジオとはクレイトン・アイビィとテリー・ウッドフォードの仕切りであり、スタジオメンツは Pete Carr(gtr) / Lenny Le Blanc(bass) / Roger Clark(dr) / Clayton Ivey(kbd) / Tom Roady(per) …そうですね、まさに「マッスルBチーム」(No. 81 フィリップ・ミッチェル項参照)スタジオとはこのウィッシュボーンであったということ、これ正解と思う。
ちなみにT・ウッドフォードの名前は No.39『 Motorcycle Mama』にも出てくる。


実際にこのビリー・シーンの曲を聴くと、ギターこそもろにピート節とは言えないが全体の音像はフレデリック・ナイト "I've been lonely for so long"(これも買わなければならないマッスル盤)に非常に近い、サザン・マナーの好楽曲としておこう。

***

もう1曲、スタッフ&ラムジェット、これは male/female 二人組らしいがそれ以外にはまるで手がかりなし、謎のデュオ。曲が Ronnie Wilkins / Kenneth Moore で、ライナーにはケニー・ムーアが… who wrote for top Muscle Shoals labe Fame と記載されている。フェイムのソングライターということだろうか(かなり突っ込んでる自負があるワタシですがこの名は知りませぬ)。
ただしプロデュースがボビー・ハート(ボイス&ハート)。凄〜くイイ曲!なれど録音はロスじゃないかな。ベースがピック弾き、マッスル界隈のベーシストにはまずいないタイプ。

***


いままでアルバム(LP)を集めてきたマッスル録音盤だが、このようにシングル・オンリーとなるともう底なし沼(笑)。CDでコンピされればまだいいが、オリジナルシングルを手探りで、となればもう金がいくらあってもたりゃしませんヨ。
なのであくまで参考盤(参考曲)、基本的にシングルはアンタッチャブルということで…よしなに…。

 

(060323)













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