#093
"Mavis Staples / Oh What A Feeling"
[ '79 Warner Bros./US]
produced by Jerry Wexler / Barry Beckett
<C:★★>

 それにしてもねぇ、繰り返すけどウェクスの女を見る目は腐ってない?(笑) いやいや、それは新人シンガーを見る目として過去に言ったこと…。このメイヴィスはぽっと出の新人とは訳が違う、過去全米1位曲も持つあの南部ゴスペルに根ざした由緒正しき(?)ステイプル家の人なんですゼ。それがよ、1曲目 "Tonight I Feel Like Dancing" はリミックスが施されたフルディスコヴァージョンだそうで。びっくりしちゃうよね〜。間違いなくあの "Respect Yourself" の声なのに、それでディスコ歌われちゃあ。いや、ディスコが悪いってことじゃないけど。オレ、ドナ・サマーやアニタ・ワードなんか大好きだし。 意外ってこと、それとマッスル産でディスコってのは…どうもなぁと。

 残りはディスコ…っぽいのもあるけれどまあいわば女性ブラック・コンテムポラリィ・ミュージック。お洒落な、ね。時代の激変がこのメイヴィスをしてこう変化させてしまうとは。しかしウェクスという人はディー・ディーといい、こういうことをさせたがるタイプだったりして。オレにはとてもハマっているとは思えないだけ。
 音も、たしかにスネアはロジャー・ホーキンスの音なんだが…ほんとにすべてマッスルでの録りかぁ?という感じ。ジミー・ジョンソンがギター弾いているとはとても思えない楽曲ばかり。一応クレジットは四人衆にマッスル・ホーンズで全曲マッスル・スタジオ録りとなっている。但しギターはピート/ジミー以外に Larry Byrom, Mose Dillard, Mark Knopfler で五人表記。ピート/ジミー/バイロムのマッスルギタリストらが弾いているとはとても思えないチコチコとカッティングするブラコン/ディスコ・ギターばかりなのだ。95%はモーズ・ディラードなるディスコ・ギタリスト(?)なのかもしれない。 それとこのマーク・ノプラーとはあの Dire Straits のノプラー…だろうなぁ、同名異人はないだろう。けれどこれまたノプラー節は皆無なのだがいったい?
(1曲Aー4のスローナンバーのみピートと思われる透明感あふれるギターが聴こえる)

 何度か聴いて分かった。この盤、マッスルとかウェクスラーとかステイプル・シンガーズとかを一切がっさい頭から抜いて聴くべし。79年の女性ブラコンアルバムとして聴くぶんにはそれほど悪くない。

(蛇足:80年代の後半にメイヴィス、プリンスのペイズリィパーク・レーベルからアルバムを出した…よなあ?)

 

#094
"The Staples / Unlock Your Mind [天翔る想い]"
[ '78 Warner Bros./JP]
produced by Jerry Wexler / Barry Beckett
<A:★★★★>

 ピートのサイトに自身のギタープレイ曲として挙げていた一曲が "Chica Boom"。でそれが The Staple Singers となっていたから分からなかった訳だ、このアルバムのトップに収録。「ステイプルズ」と短く改名だったのね。 挙げるくらいだから自信のプレイだったのだろう、なるほどリードらしいリードを弾いている。 
 5頁に入れたようにステイプル・シンガーズといえばゴスペルに根ざした慈悲深きファミリーバンド…なんていいながら実はよく知らなくて。ポップ・ステイプルっつーオヤジさんとその三人娘…との漠然としたイメージ。で、上にあげたメイヴィスって娘さんがリードを取る看板娘でっしゃろ? 合ってるかしらん?

 前後してしまいました、そのメイヴィスのソロの前年にこの改名盤。“シンガーズ”取りにどんな意味があるのかと…考えるに、たぶんウェクスラーの仕業だな。78年とはパンクもディスコも来て音楽シーンは大変革であった。この時代に即した音作りをたとえステイプル家族といえどもせねば生き残れない…ならば名称変更もやむなし(?)。
 まあそこを強烈に感じるのはもちろん上のメイヴィス盤なのだが、その前年でもウェクスは焦っていたと見る。今チャート本をみればステイプル・シンガーズとして72年に "I'll take you there" (Stax) 、75年に Curtis Mayfield 作・プロデュースで "Let's do it again" (Curtom) と二曲の全米1位を持つ大御所なのだが、ゴスペルなメッセージがすんなり一般に受けいられた時代は終わったと。ならばもう少し大衆の指向に迎合せねばならぬとウェクスは思ったンちゃうかね。で、シティ・コンテムポラリィとでも言えそう、若干軟弱な路線に。同様な路線変更組にアリサ・フランクリンでしょ、こちらはそこそこの成功だったのだからその後追いとも見える。
 しかーし、どうにも中途半端がウェクスの悪い癖と思えてならない。この盤も、迷い見え見え。なにやらコンポラな曲があるかとおもえばゴスペルも引きずって。 "I want you to dance" なんて曲の後に "God can"(「神は万能」)ときたりする。まあこの場合の "dance" はディスコではなくて神への捧げモノとしてのダンスなのかもしれないが…。 アルバムタイトルナンバーに「天翔(あまがけ)る想い」なんて物々しい訳をつけたのは日本レコ会社側だがここらにもどうアピールすべきかの迷いが見えますなあ。

 まあいろいろ言ってますが、盤としては良いですヨ、メイヴィス盤よりもずっと。ソングライターは知らない名が多くて詳細は分からないが、有名どころのカヴァーで "Mistery Train" が。スワンプドッグ曲やら、なぜかジェフ・リン曲も演ってます。そのジェフ曲、それにトップの「チカブーム」と二曲目あたりでピートがリードらしいリードを弾いている。といってもオレのなかの“ピート節”とはちょいと違ったりするのだが。まあひさびさにピートのギターが前に出ているので甘いが「A」と付けてしまおう。ちなみに完全マッスル録音、ギターは "Rhythm guitar: Jimmy Johnson and Eddie Hinton / Lead guitar: Pete Carr " のクレジット。
 そうそう、蛇足ながらこの日本盤のライナーノーツが元(ブルース)クリエーション、ギタリストの竹田和夫。この78年当時はソロで、もともとのハードロッキン速弾きギター時代も過ぎてかなりソウルっぽいことを演っていた時期。とはいえなんでこの人に仕事をフったのかよーわからんです。内容が思い出にふけったよーわからんモンですから。
 それと、70年代の日本ワーナー盤といえば歌詞の聴き取りの Linda Hennrick ! 懐かしい名前。この盤もリンダ仕事なんスが。 "Mistery Train" のところ…、Aメロ終わってギターソロの頭でポップがちらっと喋る。そこを "Well, play your guitar... That'll bring my baby back" と聴き取っているけれど、guitar のあとに小さ〜く "Pete" と言っているンだよね。さすがにそこまでは聴き取れてないんだよなあ。まあリンダ嬢がセッション・クレジットにまで目を通しているわけないか。



******

イケるレコ、ジャケのショボさだけが残念。“これこそ南部ブラックレコらしいジャケやないかい”と通には言われそうだが…。

#095
"Luther Ingram / Do You Love Somebody"
[ '77 Koko/US]
produced by Johnny Baylor
<B:★★★★★>

 いやはや恐ろしく“ぶれ”の無いアルバムである。なにかと言えば、ジョニー・ベイラーなるおっさんの事、プロデューサーの…。この盤は完璧な「ベイラー制作」アルバムとなっている。 過去 Freddie North 盤も完全ジェリー・ウィリアムズ(スワンプドッグ)制作盤であったが、この頃の南部R&B盤の制作スタイルはこうなのだろうか、白人盤…という言い方もなんだがここで採り上げる他の盤とはえらく違うスタイルは確か。 

 ルーサー・イングラム、カヴァーも多い(ロッド、ミリー・ジャクスン他)南部の超名曲 "(If lovin' you is wrong) I don't want to be right" のオリジネイターとして知られる。それにステイプルズ "Respect Yourself" のコ・ライターもこの人だ。ただ個人的にはLP聴くのはこの盤が初めてなので他のレコの状況は分からないのだが、この盤に関してジョニー・ベイラー氏は arrange, engineer, photography, art direction, creative direction にも名を連ねる。
 そして2曲はイングラムとの、2曲は Tommy Tate との共作だが全10曲すべてのソングライターでもあるのだ。“オレのレコードだ”と言わんばかり。ルーサーは完全な信頼を寄せているからか、はたまた完全に支配下に置かれているのか?…歌うことに徹している。

 ぶれの無さは音にも表れている。裏ジャケクレジットに録音場所もミュージシャン・クレジットもない。"Rhythm Track : Muscle Shoals Sound Rhythm Section" とあるのみ。がそれだけで十分。間違いなくマッスル・スタジオでの録り、バックを務めるのは四人衆にピートのみと見た。全曲音の定位が変わらない。センターにホーキンス/フッドのリズム隊、ちょい右寄りにベケットのキーボード、右がジミー・ジョンスンの Twangy なロー・フレット・ギター、左にピートのオブリと。
 これで全編通しているので変化がなく、普通ならばそうそうに飽きそうなところ。しかし淡々と歌われるルーサーの声の良さ/表現力の大きさ、腰の座ったバック演奏で…もちろん楽曲の良さが一番だが、まったく飽きることのないグレイトな盤に仕上がっておるのですヨ。そうだ、ボビー・ウーマックは自分で一切の仕切りだが同じ様なぶれの無さ、近いかな。ただルーサーはボビーほど声が低くなくどちらかといえばハイ・トーン、オレにはどちらもオーケーです。

 人に「ピート・カーのギターってどの盤で聴けます?」と聞かれたときには迷わずロッドの『Atlantic Crossing』を挙げている。もし少しでも米ロック通な相手ならば『Mike Finnigan』、この2枚。
 で、このルーサー盤なのだが、その2枚とそれほど変わらない時期の盤だというのにピートのギターは“薄い”。白人盤では「ソロらしい弾き」を要求されるということだろうか。多分にそう想える。対し黒人盤セッションではほぼソロなんてないもんね。オブリに徹している。といってもそれが悪いわけでなく(心情的にはもう少し弾いてくれよ、はあるが)、ブラックミュージックへのアプローチとして正解なのだろう、ピート及び四人衆の本当に腰が座った音作りに "Muscle Shoals Rhythm Section" の実力を思い知るのだった。
 ベイラーの堅牢な制作姿勢(?)/リズム隊の実力/ルーサーの歌、三位一体とはこのこと也。ブラックミュージックの粋(すい)が詰まったアラバマ産の名盤なんじゃないでしょーか、ブラック門外漢ながらゴーマンかましてそう言わせて頂きマッスル。

*****

 と、これでシメようかと思ったがいい盤なのでその後も数回聴き返しているが、はて?ギターはほんとにピートか?という疑問が正直わいたりして。何度も書いているようにピートには "これぞピート節!" というフレーズがあるンだがたとえクレジット上で全曲 lead guitar: Pete Carr となっていてもそれがまったく聴こえない盤も少なくない。
  で、上記のように黒人盤では特に聴こえてこないのでこの盤のような場合、ピートではなく Larry Byrom もしくは Ken Bell とも思えたりする。が、悩んだところで誰にもそんなこたぁ分かりゃしないっしょ(笑)。で、日本一(笑:二はいないと思う…)のピート研究家の独断で進行する。この盤、Aー4/B−4でのエレキ・シタール、Aー5での甘いオブリ、それと全曲定位に変化ないところからリード(オブリ)はすべてピートと決めるのだ。



*********

13 page では2枚連続して採り上げた Brad Shapiro 関係盤。で、南部ソウル界ではそれなりの「顔」らしいシャピロだが知るはミリー・ジャクソンの裏方としてのみ。どうやらえらくマッスル録りに固執していそう、マッスルスタジオからすれば“大のひいき筋”といったところでは。そんなシャピロがらみのマッスル盤を続けて4枚…。当然すべてブラック、このところはブラック・マッスルづいてるなあ…。

#096
"Millie Jackson / I Got to Try It One Time"
[ '74 Polydor/JP ]
<C:★★>

 こりゃおっそろしく魅力のない楽曲が並んじまってるなあ。個人的にひっかかるモンはほぼ無しですワ。いつものミリー節=ラップがらみの愛憎劇で感情爆発というパターンがないところだけが救い、全10曲が別個に歌ものらしく並んでいるのはよいのですが。

 過去採り上げ盤4枚に先がけるこの74年盤がミリーの3枚目とある。邦題は「モーニング・アフター」なんだが「ミリー」なんだかよく分からない表記のライナーは件のサクライ先生。しかし、このセンセ、なんだかいい加減。10曲中マッスル録りは2曲と書いているがどう聴いても7曲がマッスルで残り3曲がNY録音。 裏ジャケ記載は…録音がNY2ヶ所とマッスル、プロデューサーはお約束のシャピロが7曲と Reaford Gerald なる名で3曲とある。
  つまりシャピロはすべてマッスル録りでジェラルド氏はNY録り。音像で、いやホーキンスのスネア音で区別つくでしょ。サクライセンセが2曲としたのは、ライター表記下に著作権会社名が入っていて、2曲のライター=フィリップ・ミッチェルのそれが Muscle Shoals Sound Publishing になっているからそれ見ての判断だろう。いい加減でしょ?、そーじゃないって。だいたいマッスルミュージシャンはこまかに記載されているのにNYサイドは special thanks に "New York musicians" とあるのみ、それからしてもこの盤の主はマッスルと分かりそうなもの。

 で、その記載だが、ゴールデンクァルテット=四人衆にピート/ジェリー・マスターズ&スティーヴ・メルトンのエンジニアと完璧マッスル仕様。だが、う〜む…<リズム:ジョンソン、リード:ピート>のギター表記ではなくて確かに Jimmy Johnson, guitar : Pete Carr, guitar だわ。その通りリードらしいプレイはいっさいなし、皆無。Aー3フィリップ・ミッチェル曲でのエレキシタール、B−2ドン・コベイ曲でのオブリにピートらしさがちらりと顔を出す程度。

 

 


#097
"Wilson Pickett / Mr. Magic Man"
[ '73 RCA/US ]
<C:★★>

 この盤、ユニオンで¥800だったがジャケにシールが2枚貼り。「Rasputin's $1.95」、ラスプーチンズっていったいどこのレコ屋だ?…もちろんドルだから米に決まってますがな。ロシア系の店主? それと「Dorothye Clariett / 2215 Babette Way, Sacramento, Cal」。カリフォルニア州はサクラメントのドロシィ・クラリエットさん、なんだって売っちまったんだ、この盤を! ご丁寧にレーベル面にまでこのネームシール貼ってますがな、ドロシィさんは。このあと何人の手を経て埼玉三郷まで流れたのかねぇ。

 録音に関する表記は一切なし。produced by Brad Shapiro & Dave Crawford, Rhythm arranged by Pickett / Shapiro / Crawford, strings arranged by Dave Van Depitt / Mike Lewis のみという潔さ。しかし60年代のマッスルを代表するアルバムの1枚がこの人の「ヘイ・ジュード」であったこと、それよりもやっぱりシャピロの仕込み盤ゆえマッスルよね。弦のデイヴヴァン氏はたしかデトロイトの人、なので上記ミリー盤同様に数曲はマッスル外での録りやもしれぬ。

 でもって聴いてみますと。あ痛タタ…えらいノイズ盤。1曲目のタイトルトラックは明かにマッスル外、デトロイト…ではなくてメンフィスあたりでの録りかも。2曲目…こりゃマッスルらしいなあ。しかしドラムが“硬い”。マーリーン/ジーニー・グリーン盤あたりのホーキンスは硬かったような記憶、あれ何年盤だ?
 ノイズで気が散ってしまうプア盤なのだが10曲うち8曲がマッスルとみた。さてギターだが、例によってピート節は皆無。ならばケン・ベルかラリー・バイロムか? いや、ケンやラリーならばもっと弾く。この“弾きの薄さ”がブラック盤でのピートと判断。つまりは[C]評価、どこで弾いてまんねん?盤…。

 アルバムとしては、声は趣味じゃないけれどスロー/アップともになかなかの佳曲揃い。いい盤なのにクスラッチノイズに邪魔されて。とはいいつつ別盤を見つけても買いはしない…てなところのブツでした。

 


*********

AMG ではミリー・ジャクソンはこのファクツ・オブ・ライフの“メンバー”となっている…。

#098
"Facts of Life / Sometimes"
[ '77 Kayvette/US ]
produced by Millie Jackson
/ executive producer : Brad Shapiro
<B:★★★★>

 男二人に女一人編成グループ。(元)ドリカム編成とでも言おうか、いやあえてPPMまで戻っちまおうか。 ライナーによれば、各自別個活動をしていたところ、「3人寄れば文殊の知恵」?、3人を知るミリー・ジャクソンがおのおのに声かけて…“この際3人で組んだらどーよ”と。ならばやってみっぺとうなずき合う3人、手打ちの後にミリーはプロデューサー&マネージャーを約束、と。
 
 とにかく“濃い”です。ジャケを見てくれれば分かるでしょう。どっぷりブラックエキスが出まくり。「フラミンゴ・スタジオ」あたりでは感涙盤とされているのでは。表も裏も真っ黒ジャケで、ライナーノーツが濃くて凄い。 まずメンツは Keith Williams, Jean Davis, Chuck Carter のお三方。キースさんのご趣味は「ハンドボール、テニス、トラック(陸上?)に…“Making Love”」! 女性ジーン嬢はあのタイロン・デイビスの妹さんだそうで。カーターさんはパートタイムで床屋をなさっていたとか(涙)。 ブラックのライナーで欠かせないのが astrological sign(星座)。黒人さんは好きだよねえ、なんでだろ?

 そんなグループのアルバムはリミーの仕込みということで後ろ盾シャピロの力も借りまして。Kayvette Records というのはそのシャピロが所有するレーベルとのこと。ディストリビューションは TK Productions というフロリダの会社に任せている。録音もリズム録りはマッスルでストリングス/ホーン、それに歌入れはマイアミのクライテリアというお馴染みのパターン。典型的アラバマ=フロリダ・ライン制作盤。

 その内容のほうもある種お馴染みパターンか、バンクス=ハンプトン、ジャクソン=ムーア、フレデリック・ナイトなど南部R&Bライター曲を歌い上げ。「く〜!こりゃタマらぬ!」という曲はないのだが平均すれば高得点。アップにスローに佳曲多し。個人的ベストはやはりバンクス/ハンプトンの実力か、"Caught in the Act (of Getting it on)" というナンバー。ラストのスロー曲 "Love is the final Truth" はこのグループのオハコ/代表曲だろうな。薄いがいいオブリをピートが弾くナンバー、これも捨てがたい。
 さすがに3人別個に活動していただけあって各曲のリードを3人で分けている。で、やはり声は出るのだなあ。ゴスペルなバックグラウンドも当然でこのグループは最初 The Gospel Truth の名で始めたとある。しかしそれではゴスペルグループと人にとられてしまうから(…って、そりゃ当たり前よね)、改名しての再出発盤がこれ。

 ギターは、う〜む…悩むところだなあ。ピートっぽいところもあり、ちゃうなってところも。で、ピート/ジミー・ジョンソンにもうひとりと推測。かなりいいギタープレイが聴ける盤ではある。
 タイコ、毎度のことだがホーキンスのドラムがいい。Steady なプレイとでもいうのだろうか、まったく派手なところはないのだが…いい。

 

 

#099
"The Facts of Life / A Matter of Fact"
[ '78 Kayvette/US ]
produced by Millie Jackson
<C:★★★>

 翌年の二枚目がこちら。ジャケがやけに「あか抜け」ました。一年でこの変化はちょっとビックリ。グループ名に "The" が付いたのも違い。(といっても1曲目 "Did he make love to you?"、Aー4 "Do you wanna make love?" …やはり基本はメイクラブなブラックワールド?)

 内容も一気にソフィスティケイト。バックトラック/マッスル、ストリングス&ホーン/クライテリアは前作ままなれど歌入れはNYの Media Sound となっている。そこらも要因か。それとソングライターがすっかり変わっている。ほとんど知らない顔なので違うかもしれないが、著作権管理でみる限り南部曲は一掃されて都会モードになったみたい。 Don Kirshner Music, Almo Music など。ラスト曲 "Dr. Feelgood" はご存知 Screen Gems、Bゴールドバーグ/Gゴフィンという "It's not the spotlight" コンビによる楽曲。
 さて、そんな“あか抜け”盤がよいかというと…う〜む、難しいところ。楽曲のクオリティはそれなりにあるので駄盤ではない、けれどもものすごく中庸な…平凡なブラックコンテンポラリィ・アルバムと思う。この2枚で終わったのもやむなしなグループでしょうかね、ただ自分らで曲を書けないぶん、非常にキャッチーな1曲を見つけてそれがヒットしていたら展開は違っていただろうな、と。なにしろ三人三様にリードが取れる人たちだから歌唱力は文句なしなので。

 1曲目のブラッキーなメイクラブワールドがなんだかねえ、敗因のひとつかもなあ。これを“売り”にするならば全編ディープにゆくべきなのに残り曲はやけに他人行儀だし。  この6分近い曲、どうやら別れそうで別れていない男女のトラブル話。女がほかの男どデートしたのを男がねちねちつつくうちに痴話喧嘩、その仲裁にミリーが入り込んでくるという、まあお約束みたいなミリー・ジャクソン関係盤らしさ。やはりオレにはこの手は…腰が退けます。

 曲が曲なのでバックも大人しい。NY録音のよう、マッスルらしさはほぼ無し。ギターも同様。
(041001)
 

 





 

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